NISAでIPOをやりたいと思っていたのに、気がつけば市場が変わっていた・・・
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私は株式投資が好きですが、情報収集に時間を取られるために長い間封印していました。でも、2024年のNISA改正でつみたて投資枠と成長投資枠が両方活用できるようになったときに、せめてIPOをやりたいと思ったのです。そこで、わざわざ主幹事になるケースが多いSMBC日興証券に、NISA口座を開設し直したのですが、結局はやらずに2年以上経ってしまいました。
そろそろと思っていた矢先、仕事関係の方からSmartHR が2026年中に東証プライムに上場するだろうという話を聞き、俄然興味とやる気が沸いてきました。
そもそも、IPOとは何か
知らない方のために簡単に説明します。

IPOとは企業が株式市場に新規上場することです。個人投資家は、上場前に証券会社を通じた抽選(ブックビルディング)で株を申し込み、当選すれば公開価格で取得できます。公開価格は、一般的に割安に設定される傾向があります。そのため、上場初日につく最初の価格(初値)が公開価格を上回るケースが多く、購入できれば短期間で利益を得られる可能性が高くなるわけです。
当選して初値で売るだけで利益が出ることが多いため(勝率7~8割が一般的)、投資初心者にも向いている手法として知られています。
IPO株は、証券会社ごとに割り当てられる株数が決まっていて、すべての証券会社が取り扱えるわけではありません。その銘柄を取り扱う証券会社の中の「主幹事」と呼ばれる中心的な証券会社に、全体の80%〜90%が割り当てられます。
やっとIPOをやろうと思ったときに知る、環境の変化
SmartHR は人事労務クラウドの雄で、ユニコーン企業(時価総額が10億ドル以上で、未上場のベンチャー企業 )として名前が挙がり続けている会社です。IPOの目標時価総額は約1,600億円と桁違いです。
しかし、調べてみたところ、SmartHR のIPOにおいて上場初日に初値が数倍に「跳ねる(急騰する)」可能性は極めて低いことがわかりました。
その原因の一つは、SmartHR のIPOのスケールが大きすぎることです。 時価総額約1,600億円は、日本のIPO市場では超大型案件に分類されます。 市場に供給される株数が多いため、初値を押し上げるには莫大な買い資金が必要になるのです。そのため、過去のデータからも時価総額100億円を超えるような大型案件は、初値が公開価格付近に落ち着くか、公募割れするリスクが高まる傾向にあります。
そして、もう一つの原因は、私のIPOへのモチベーションを下げるに十分なものでした。というのも、2026年の日本のIPO市場は、近年稀に見る厳しい逆風にさらされていたからです。2026年に入ってから新規上場した企業は、4月2日上場のビタブリッドジャパンまで7社連続で初値が公開価格を下回る(公募割れ)という異例の事態となりました。つまり、7連敗です。
IPO市場冷え込みの主な原因
IPO市場がこれほどまでに冷え込んでいる背景には、マクロ経済、地政学リスク、制度変更、そして投資家心理の悪化といった複数の要因が絡み合っています。
値決めルールが変わった
2023年10月、日本証券業協会などの主導で値決めルールが改正されました。従来は、事前に提示された「仮条件(例:1,000円〜1,200円)」の範囲内でしか公開価格を決定できませんでした。しかし新ルールでは、投資家の需要が強い場合、仮条件の上限を上回る価格(例のケースであれば1,200円超)で公開価格を設定できるようになりました。
つまり、企業が「最初から適正な価格」で上場できるようになったわけです。その結果、個人投資家にとっての「ご祝儀 (公開価格が安く設定されていたことによる初値プレミアム)」が、削られました。
東証による上場維持基準の厳格化
2021年の125件をピークに、上場件数は明確な下落トレンドに入っています。2025年は65件と、ピーク時のほぼ半数です。東証グロース市場への上場は41社と12年ぶりの低水準。背景には、東証がグロース市場の上場維持基準を引き上げたことがあります(「上場後10年経過後に時価総額40億円以上」から「上場後5年経過後に時価総額100億円以上」へ)。安易な小規模上場 は構造的に排除されつつあります。
地政学リスクによる株式市場全体の不安定化
2026年2月下旬にイランへの攻撃が始まり中東情勢が緊迫化したことで、株式市場全体の先行き不透明感が強まりました。これにより投資家心理が急速に冷え込み、平常時であれば買いが集まるような優良銘柄であっても初値が伸び悩む要因となりました。
勝率の数字は悪くないが、中身が変わった
2024年の初値勝率(公募価格を上回る初値がついた割合)は約74%、2025年は約81%——数字だけ見れば「まだ高い」という印象です。
ただし、これは「公募価格→初値」の話にすぎません。初値がついた後どうなったかを見ると、2025年に初値を上回って推移した銘柄は全体の約32%にとどまりました。つまり、約7割の銘柄が「初値天井」となり、そこからは低迷しているわけです。初値上昇率の平均は2023年の約6割から、2024年は約3割にまで低下しています。
抽選に当選して初値で売った人は儲かりますが、初値で買い増した人や上場後に購入した人は大半のケースで損をしています。「勝率が高い」という事実は変わっていませんが、その恩恵を受けられるのが「抽選当選者だけ」となっているのです。
これからIPOとどう付き合うか
期待度の下がったIPOですが、もともと抽選というハードルがあったので、「そんなものだ」と思えば、完全に見限るほどではないと思っています。
以前と変わらず、事前に十分に下調べをして申し込むかどうかを決めます。SmartHR のような案件は初値の急騰を期待するのではなく、中長期的な業績成長とともに株価上昇を狙う銘柄と考えるのが現実的ではないでしょうか。
そして、通常のIPOは「とりあえず申し込めば儲かる」から「選んで、当たったら即売る」です。
6月の話題銘柄について
最近、IPO界隈で名前が出るのはSpaceXとGOとLiNKXです。
SpaceXは言わずと知れたイーロン・マスクの宇宙企業。なんとSBI証券や楽天証券などの日本の証券会社を通じて申し込めることになり、NISAの対象にもなります。
GOはタクシー配車アプリで、想定時価総額はSmartHRを上回ると見られています。
つまり、どちらも魅力はありますが、「初値で売る」タイプではないので、上場してからの値動きを見てから考えるのがよさそうです。
LiNKXは金融機関の勘定系システム、APIゲートウェイ、データ基盤といった領域を、クラウドネイティブ技術やAIを用いて刷新する技術特化型のシステムインテグレーター(SI)です。実は私は証券会社のシステム開発をしていたので、LiNKXが金融機関のレガシーシステムをアップデートしている会社と知り、個人的には注目しています。想定価格710円と手ごろだし、同業のクラウドSIなどと比較しても割安なのではと見られているようです。ただし、詳しくは書きませんが、割とはっきりしたリスクもあります。
LiNKXのIPOはSMBC日興にも割り当てがあるので、私は申し込むつもりです。ただ、主幹事が野村証券なので、おそらく当たらないでしょう。野村に口座開設するほどの動機もありません。
結局のところ、IPOとはそういうものです。調べて、選んで、申し込んで、当たらない。それでもあまり期待せず続けて、たまに当たったら「ラッキー」と思うくらいでちょうどいいのです。
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※本記事のデータは2026年5月時点。IPO勝率の集計方法は情報ソースによって異なる場合があります。
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