なぜ長期優良住宅だけが、住んだ後まで縛られるのか
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私は、過去に何回か長期優良住宅の解説記事を書く機会がありました。長期優良住宅の着工件数は2024年度(令和6年度)実績では、長期優良住宅に認定された新築戸建ては13万6,842戸で、戸建て着工戸数の39.3%を占めています。つまり、ざっくり5戸に2戸が長期優良住宅です。割合は5年連続で過去最高となっています。私は正直言って、この数字に驚きました。一般的にいわれている長期優良住宅のデメリットは決して小さいものではないにもかかわらず、多くの人が選択しているからです。
長期優良住宅は、建てたら終わりではない
長期優良住宅とは、その名のとおり、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられた住宅です。
認定を受けるには、劣化対策や耐震性、省エネルギー性、維持管理・更新の容易性などについて一定の基準を満たす必要があります。住宅の面積や居住環境への配慮なども認定基準に含まれています。
長期優良住宅の認定を受けると、条件に応じて以下のようなメリットがあります。
住宅ローン控除で有利な借入限度額が設定される場合がある
登録免許税、不動産取得税、固定資産税などの特例がある
取得時に受けられる補助金制度がある
フラット35の金利優遇を受けられる
耐震性・耐久性・省エネ性などをまとめて第三者に説明しやすい
売却時に住宅性能や維持履歴を示せる
一方で、以下のような負担があります。
認定申請・審査に費用と時間がかかる
基準対応のため追加工事が必要になる場合がある
間取りや仕様に一定の制約が生じる場合がある
認定後は維持保全計画に沿って点検・修繕する必要がある
点検・修繕などの記録を保存する必要がある
これらの負担のうち、気になるのは認定を受けた後の2つです。
長期優良住宅の認定を受けた人は、建築後も認定された維持保全計画に従って住宅を維持保全し、建築や維持保全の状況について記録を作成・保存しなければなりません。
適切に維持保全されていない場合には是正指導や改善命令が行われ、改善命令に違反すれば認定を取り消されることもあります。認定を取り消された場合、受け取った補助金の返還などを求められる可能性もあります。
つまり、「この家は高い性能を備えています」と認定して終わりではありません。その性能を維持できるよう、建てた後の管理まで制度の中に組み込まれているのです。「そんな必要があるのか」というのが私の率直な疑問です。
耐震・断熱・耐久・維持管理性などの住宅性能には価値があります。
しかし、どんなに高性能な家でも時間が経てば傷んでくるので、メンテナンスは義務がなくても必要です。長持ちする家を建てる自由があるように、維持保全についても所有者の自己責任でいいのではないかと思うのです。
長期優良住宅に認定されないとダメなのか
性能の高さをうたう住宅の認定制度は、ほかにもあります。認定低炭素住宅やZEH水準の住宅も住宅ローン控除の区分として設けられています。ところが、これらには維持保全計画をつくる義務も、点検記録を残す義務もありません。建てた後のことは、基本的に所有者に委ねられています。
減税の対象になるという点では横に並んでいるのに、住んだ後まで義務が続くのは長期優良住宅だけなのです。
そうであれば、私ならあえて長期優良住宅の認定を受けない方法を考えます。たとえば住宅性能表示制度では、耐震性能は「耐震等級」、耐久性にかかわる性能は「劣化対策等級」、断熱性能は「断熱等性能等級」などで評価できます。
長期優良住宅の認定を取らなくても、耐震性を高め、劣化しにくい構造にし、断熱性能をZEH水準以上にするといった家づくりは可能です。
しかも、税制上の優遇も「長期優良住宅でなければ受けられない」というわけではありません。2026年から2030年までの住宅ローン減税では、新築の認定長期優良住宅などの借入限度額が4,500万円なのに対し、ZEH水準省エネ住宅も3,500万円までが対象で、いずれも控除率0.7%、控除期間13年です。子育て世帯などにはそれぞれ上乗せがあります。長期優良住宅のほうが優遇は手厚いものの、ZEH水準でも一定の優遇は受けられます。
長期優良住宅の優遇は住宅ローン減税だけではないのですが、私には維持保全のデメリットを補うほどとは思えません。
欲しいのは長期優良住宅というお墨付きではなく、丈夫で快適で長く住める家なのです。
「資産価値を守る」というけれど、家の価値は建物だけで決まらない
長期優良住宅を普及させる政策の背景には、「つくっては壊す」住宅から、「いいものをつくって、きちんと手入れして、長く使う」住宅への転換があります。
いい住宅を建て、適切にメンテナンスし、その履歴が残っていれば、中古住宅として売る際にも品質を評価しやすくなるという制度思想です。
けれども、住宅という資産の価値は、建物の状態だけで決まるのでしょうか。
どんなに丈夫な家でも、周辺人口が減少し、生活利便性が低下し、その地域で「家を買いたい」という人そのものが少なくなれば、売却価格を維持するのは難しくなります。
反対に、建物が古くても、住宅需要の強い地域では土地を含めた不動産として高く評価されることがあります。
つまり、「建物の価値を維持すること」と「不動産という資産の価値を維持すること」は同じではありません。
もちろん同じ立地条件なら、きちんと手入れされた住宅のほうが評価されるでしょう。
長期優良住宅の建物については、長期にわたる維持保全を所有者に義務づけます。しかし、その建物が存在する場所で何十年後にも住宅需要があるのかという市場性は、長期優良住宅の認定が保証するものではありません。
人口減少が続く日本では、この点は今後ますます無視できなくなるのではないでしょうか。
長く使える家と「長く維持する義務」は別ではないか
私は長期優良住宅がよくないものだとまでは思いません。長く安心して住める家が増えることは社会にとってプラスですし、誰でも長持ちする家を建てたいと考えるはずだからです。
長期優良住宅には住宅ローン減税をはじめとする優遇措置もありますし、それらのメリットと維持保全の義務を比較して、認定を選ぶ人がいて当然だとも思います。
けれども、高性能で長く使える住宅をつくることと、その後の所有者に長期間の維持保全を義務づけることは、本当にセットでなければならないのでしょうか。
耐震性・耐久性・断熱性能が長期優良住宅並みの家で、必要なメンテナンスは自分の判断と責任で行うので十分です。
さらに、住宅の資産価値を守る観点では、必要なのは立地と建物の状態を含め、実際に価値のある住宅が中古市場で適正に評価される仕組みではないかと考えています。
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※本コラムは、長期優良住宅制度そのものを否定するものではなく、住宅の性能、維持保全義務、資産価値の考え方について筆者個人の視点から問題提起するものです。長期優良住宅には税制・住宅ローン等の優遇措置があり、適否は住宅の仕様、立地、資金計画、将来の住み替え予定などによって異なります。実際に住宅を取得する際は、最新の制度内容を確認したうえで、住宅事業者や金融機関などの専門家にご相談ください。
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